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マーメリアでの激戦から一日が経過し、要塞島に戻った弘樹たちは束の間の休息を取っている。
といっても、楽しい休暇を過ごしているというわけではない……色々な意味で。
なぜなら、今、まさにこれから、キヌアは自分が城から抜け出して弘樹の傍にいたことを白状しようとしているのだから……。
だが、ミオはとうに気づいていた。
当然だろう。弘樹らが出撃していったのち、ミオはキヌアに薬のことについて少々聞こうと思っていたのだが、どこにも姿が見当たらないので、ある程度の予想はついていたらしい。
そんなこととは露知らず、キヌアは孤城の陰にミオを呼んで頭を下げた。
「……何を謝ることがあるというの?」
「ふぇ? だ、だってわたしは……」
「好きな人の傍にいたい、と思うのは当然のことであって、貴女のように戦場まで黙ってついていかなかったのは、間違いなく私の落ち度……でも、私は負けないわ。絶対に」
強く言い残したミオは、早速弘樹の寝室へと向かっていく。
残されたキヌアはどうすることも出来ないので、仕方がないので負傷兵たちが収容されている医務室へ向かった……。
弘樹は自室のベッドに寝転がって天井をジッと眺めている。
食事もしっかりと取ったので体力も随分と回復して能力も絶好調であり、外傷も無いのでいつでも戦える状態だ。
しかし、弘樹は戦いの現実を知ってしまったためにかなり迷っている。
取り敢えず生き残ることはできたが、代わりに多くの兵士を殺してしまった……。
考えながら、弘樹は左の頬を擦る……。
要塞に着く直前に、弘樹はヴェルディンに呼びだされて甲板に出た。
理由は分かっていたので何か言おうとしたとき、ヴェルディンの固い拳が弘樹の頬に食い込み、口の中に生ぬるく鉄くさいものを感じた。
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