9516人が本棚に入れています
本棚に追加
/908ページ
一方、ギルドは弘樹に見守られながらミオの治療を受けていた。
「いっでぇ――ッ!!」
「我慢なさい。手元が狂うでしょ?」
ミオは厳しい口調で治療を続ける。
とはいえ、この場合は痛みを訴えても致し方が無い。
ギルドはリョウセンに弾き飛ばされた時に肩の関節が外れており、今まさに、ミオの怪力によって無理やり関節に戻されたのだ。
妙な音が辺りに響き、キヌアはずっと耳を両手でふさいでいる。
「医者志望がそんなのでいいのか?」
「嫌なものは嫌なんです!」
彼女に医者が務まるのか、弘樹は自信が無くなってきた……。
この救急テントにはカルナインの医師だけでなく、ブレストの衛生兵もいる。
事の真実が分かった彼らもまた、積極的にカルナインに協力してくれているのだ。
元々同盟国だったので、連携もはやい。イールド家の息女が傍にいるとも思えば、さらに仕事の速度と気合も上がるというものだ。
本当にブレストは忠臣揃いだ。
まさに侍の国……キヌアが以前にブレスト人と日本人は相性がいい、と言っていたことに今更ながら納得した。
数日後、傷がいえたリョウセンは、メイスの指示によってジャンの第一艦隊と合流することになった。
なぜ自分も帝都に連れて行かない、というリョウセンの疑問に、少人数で潜入したほうが近衛師団の目をごまかせるという策を説明すると、案外あっさりと納得して、速馬に飛び乗って馬首を軍港に向けた。
リョウセン直属の参謀も、メイスの意図を察したのかにやりと笑う。
出発の前に、リョウセンはヴェルディンに向けて口を開いた。
「デュランボルグよ、今回は不覚を取ったが、次は負けん! 覚えておけ!」
「……いつでも……くるがいい」
「首を洗って待っていろ! さらば!」
リョウセンは部下を引き連れて地平の彼方へ去っていき、カルナイン軍は暫しグランドス要塞に留まって帝都へ侵入する作戦を練るのであった。
最初のコメントを投稿しよう!