第21章 砂漠の魔女

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 翌日の早朝、シクルスらを乗せたカルナイン王立軍は多くのブレスト臣民に見送られながら故郷へと舳先を向けて旅立った。  弘樹らは暫しブレストへ残ることをメイスに言っていたので、港で手を振る弘樹達を見下ろしてメイスは隣に立つヴェルディンに笑いかける。 「ふふふ……暫く寂しくなりますね」 「……黙れ」  ヴェルディンは歓声を上げる民衆に背を向けて、折れてしまった月牙を握って刃に映る自分の顔を眺めている。 「……全く、武人とは難しいものですね。何もリョウセン殿を殺すことは無かったのでは?」 「奴が望んだ……それで、十分だ」 「……そうですか。ならばそれ以上言いません。剣の方も、帰国後すぐに腕のいい鍛冶屋に頼みましょう。しかし……気になるのはキヌアさんの不可思議な力ですね。まさか彼女も…………調べねばなりませんね」 「勝手に……しろ…………トタクの屋敷は、どうだった?」 「どうもこうも……色々と最悪でしたよ」  珍しくため息を吐きながら、メイスはトタクの屋敷で起こった出来事を話し始めた。  宮殿での宴が落ちついた頃を見計らい、メイスを含めた調査団がトタクの屋敷へと赴いた。  扉を開けて中に入ると、皆がその凄惨な光景に絶句する。まず見えたのが豪華絢爛なエントランスに横たわるメイドや使用人たちだ。  一番近くに倒れていたメイドを抱き抱えると、体はとうに冷たくなっており、肌の色も青紫に変色している。  メイスはともかくとして、中には嘔吐する文官が出た。  エントランスから階段を上ってトタクの私室に入ると、そこはまだマシな方で、メイスはホッと息を吐きながら早速調査を始めた。  すると、トタクが毎日記していた日記を発見したのでパラパラとページを捲ってみると、最初の方は皇帝に対する忠誠心のあり方や、艦隊司令に抜擢されたことへの喜びと感謝が書き綴られている。  これを見る限りでは、とても謀反を企てるような人物とは思えない。  さらにページを進めていくと、気になる内容が記されたページを見つけた。  書き始めである第一行目よりも外に、前書きらしきものが書きくわえられている。
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