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皆、ルピスと違って肌は褐色である。
テントの間を歩きながら、弘樹はルピスに些細な疑問を聞いた。
「なんでルピスの肌は白いんだ?」
「ん? ああ、私ってなぜか知らないけど日焼けしないんだ! 多分、この力の所為なんだろうね」
ルピスは手の平を弘樹の顔に向け、少し意識を集中すると、手の平から水が飛び出して弘樹の顔を濡らした。
「うわっぷ! み、水……?」
「うん! 私って、水とか氷の力が使えるんだ! 凄いでしょ!」
自慢げに胸を張るルピスであったが、弘樹も負けじと手の平に意識を集中して能力を発動させ、小さな炎を燃え上がらせた。
「俺は炎を使える」
どうだ、と言わんばかりに不敵な笑みを浮かべて弘樹が言うと、ルピスはさらに顔を輝かせて飛び跳ねた。
「凄い! 凄いよ!! 私以外にも不思議な力を使える人がいたんだ!! 炎かぁ、カッコいいなぁ!」
と、ルピスは大喜びの御様子であった。
歩きながら話すうちに、ルピスは色々と自分のことを話してくれた。
彼女はこの砂漠の民を纏める族長の娘であり、同時に、一族を砂賊から守る用心棒のようなことをしているらしい。
近くで商人たちが襲われているのを助けるのも親の指導で、神出鬼没と言われているのは頻繁に野営地が変わるためで、決して瞬間移動のような魔法めいたことはしていないとのこと。
弘樹達を助けられたのも、全くの偶然らしい。
二人はテント群の中央に建てられた、族長専用の一番大きなテントにたどり着いた。
普通のテントの三倍はある本当に大きなテントで、入り口に垂れさがった白い幕を手の甲で払いながらルピスは入っていった。
続いて弘樹も入ってみると、蒼い絨毯に布団が敷かれてギルドが寝ており、テントの中央には簡単な囲炉裏があって小さな炎が燃えている。
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