第22章 苦い酒

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 弘樹たちが出発して一夜明け、一人野営地に残ったギルドは、煙管をふかしながらケフィアと適当に雑談を交わしていた。  右手には一族が愛飲している酒が注がれた杯が持たれ、互いに酌み交わしている。 「へぇ、なかなかイケる口じゃないのさ」 「まぁな……」  注がれた酒を一気に飲み干し、ギルドは軽くため息を吐く。  イドラサソリの毒は殆ど抜けて、今では普通に立って歩くこともできるようになっていた。その回復力には、治療を請け負ったケフィアも舌を巻いた。 「……気にしてるのかい? あの子に言った言葉を」  手酌で盃に酒を注ぎながら、ふと、ケフィアが聞いた。 「…………」  ギルドは答えず、図星と見たケフィアはくすくすと笑う。  暫し沈黙が流れ、酒の瓶も底が見え始めた頃、おもむろにギルドが口を開いた。 「オレは……古い人間なんだろうか?」 「えぇ? 一体どうしたんだい?」 「いや、昨日の言葉を思い返してみたらよぉ……オレも大人気なかったと思えたんだよ。たしかに、女の身で賊から皆を守るには、確たる手段がいる。それが、邪道であってもな……はぁ、オレって古い人間なんだな……と」 「しみったれたことを言ってんじゃないよ。でも、あの子のことを少しでも理解してくれたのなら、私は嬉しいよ。さて、気分もよくなってきたし、もう一升空にしようかねぇ!」  と、ケフィアはどこからともなく、酒がたっぷり詰まった瓶を取りだしてきた。  今はギルドも思い切り酔いたい気分だったので、二人は暫し飲み続けたのだが、ギルドにはこの美酒も、この日はどことなく苦く感じたという……。
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