9515人が本棚に入れています
本棚に追加
/908ページ
また、水と食料もそれほど残っていないので、ぐずぐずは出来ない。
あまりいい考えが浮かんでこないので、気分転換に少し雑談を交わすことにした。
「何だかんだ言って、実はギルドってルピスのことが心配だったんだろ?」
「いい女だからな。死なせるには、勿体ないと思っただけだ」
「どうやって来たんですか? 結構、距離がありましたけど」
「飛んできたんだよ。文字どおりな。風の力を使えば、容易いぜ。にしても、あの門はどうなったんだ? 派手にぶっ壊れていたが?」
全員の視線が、ミオに注がれる。
「……だと思ったぜ」
「なによ、失礼ね。仕方が無かったの」
頬を微かに紅くして、ミオは皆から顔を背けた。
たしかに滅茶苦茶ではあったが、彼女のお陰で砦に入れたのだから笑うことはできない。
それに……また頼ることになりそうだ。
ルピスの方も難航している様子。文字は理解できるのだが、何分、文章の言い回しが古いので、どう訳せばいいのか分からない。
「ぶぅ~、古代の人ってなんでこんなややこしい言い回しをするかなぁ」
頬を膨らまし、腰に手を当てて解読を進めるルピス。
何だかんだで古代文字を辞書も無しで解読できるあたり、実は頭がいいのかもしれない。
「あれ? どこまで訳したっけ!?」
そうでもないのかもしれない。
三十分後……結局何の良案も浮かばないまま、時が過ぎた。
しかし、ルピスの方はかなり作業が進んだようだ。
「みんなぁ! 解読できたよ!」
全員がルピスの周りに集まり、一度咳払いをしながらルピスは朗読を再開した。
「光の神は、世界の素を司る四つの守護者を生み出した。守護者たちは、光明の世界に生きる者たちに恩恵と試練をもたらした。
世界が闇で満たされた時、守護者たちは神の命によって現世へ現れたという。だが忘れてはならぬことが一つある。
それは、世界を闇で覆った暗黒の使徒ゲオルギアもまた、守護者の一つであるということだ。光があるところに闇がある。ゲオルギアは光の勢力に対抗するため、闇の獣と騎士を生み出し――」
そこまででルピスは朗読をやめた。
最初のコメントを投稿しよう!