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その後に、キヌア、ミオ、ギルド、ルピスと続く。
通路は百メートルほどだった。
進んだ先には、イスカリオンが封じられていた祭壇の間と同じような造りの、四角い部屋が広がっていた。
しかし、そこに剣も無ければ、神聖な物も無かった。
あるのは……巨大な獣の亡骸だった。
大きさは森の番人であるティガルに匹敵し、体は黒く、頭はオオカミだがライオンのような鬣が生え、四肢は太く爪は鋭い。そして、尾の先端には鋭い棘が生えていた。
ティガルはまだ虎と分かるが、この生物は何と表現すればいいのか分からない。
そう……まさに怪物だった。魔獣といっても差支えない。その獣は、壁に描かれていた黒い獣とよく似ている。
異常な気配は、その獣から放たれていた。
といっても、その気配も驚きも、獣から放たれている悪臭で掻き消されていたが。
「酷い臭いね……鼻が曲がりそう……」
「ふぇ~、臭いですぅ……」
鼻を摘まみ、それでも臭いが消せないのでキヌアは弘樹のマントの中に隠れた。
「キヌア……抱き締めないでくれ」
「だって、ヒロキさんっていい匂いなんですもん」
背中に頬ずりをするキヌアを離し、眼前の獣を見つめた。
「たくっ、なんだよ、こいつは……」
ギルドがウィンディルグを取りだし、柄の先端で獣を突いた。
「流石に……生きてないよね?」
「そう願いたいもんだ。こいつが動き出したら、厄介だぜ……」
いくらか弄ってみたが、どうやら完全に息絶えているようだ。
「この世界には、こんな動物がいるのか?」
念のために弘樹が聞くと、全員が首を横に振った。
「じゃあ、こいつは一体……?」
「分からんが、いつまでもここにいたら鼻がおかしくなる。向こうから風を感じるぜ。地上につながっているかもしれねぇ」
ギルドは風が漏れている壁を見つけ、足に風を纏わせて蹴ると、壁が壊れて涼しい風が流れ込んできた。
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