第24章 漆黒の剣士

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 眼前には少し暗い森と小鳥たちの囀り……そして、薪を割る音が聞こえる。  森の中に生えた茂みの中にある広場では、一人の男の子が静かに座禅を組んで瞑想をしていた。  頬まで伸びた黒髪に、所々汚れた白いシャツに黒い半ズボン。  そして腰には一本の剣が佩かれている。  少年は、呼吸の音も立てずに瞑目を続けていた。音を立てるものといえば、鳥たちの鳴き声と心臓の鼓動、そして鳴りやまない薪割りの音。  少年は今、何を思うのか……。  ――ただ強くなりたい。世界で一番強くなりたい。全ての大切な人を守るため、全ての悪党を倒すため、俺は強くなりたい……。  その一念で、少年は修行を続けていた。  そのとき茂みの外から小さな小石が飛来し、少年の後頭部に当たりそうになったが、すぐに首を動かして小石を避けた。 「あ、外れちゃった……」  茂みの外から、可愛らしい女の子の声が響く。  少年は不機嫌そうな顔で背後を見ると、茂みをかき分けながら、小石を投げた犯人が出てきた。  滑らかな黒髪は肩まで伸び、袖の無い白いシャツにオレンジのスカートを穿いた少女。 「なんだよ、リン。修行の邪魔をするな」 「うわ、なんて無愛想な言葉……それが幼馴染に言うセリフなの?」 「あ~、聞こえないな」 「ひっどぉい! こうなったら、お父さんに言い付けちゃおうかな。ヴェルドが私を苛めたって」  リンの父は、ヴェルドの師なのでそれは誠に困る。  やむを得ずヴェルドは頭を下げた。 「……悪かった」 「分かればよろしい。あ、お弁当を持ってきたよ。一緒に食べよ!」  と、リンは青い布に包まれた弁当箱を取りだして、ヴェルドの隣に座った。 『いただきます』  きちんと手を合わせ、二人一緒に言ってから、ヴェルドは握り飯を一つ掴んでほおばる。
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