9515人が本棚に入れています
本棚に追加
/908ページ
「うん、美味い! やっぱりリンの作った梅干しは最高だ」
「ありがとう。沢山食べてね」
瞑想する前は激しく体を動かしていたのでヴェルドの胃袋は貪欲にも仕事を熱望しており、それに応えるべく、ヴェルドは次々に握り飯やおかずを平らげた。
腹が一杯になったところで、二人は一旦茂みから出て暫く歩き、森の中に建てられた小さな家に向かう。
家は二階建てで、すぐ隣に薪を割るための切り株がある。
そして、その切り株の前で斧を振り上げている少年がいた。
「おお、戻ったんか。二人とも熱いなぁ」
「うるさい。レオンこそ、ちゃんと薪を割ったのか?」
「おう! 一年分は割ったでぇ!」
レオンは、地面に散らばった薪たちを見ながら胸を張る。
癖のある金髪が目立ち、服装はヴェルドと同じだ。
三人は昔からずっと一緒なので、幼馴染というよりは兄弟といってもいい絆で結ばれている。
「レオン、お父さんは?」
「ああ、お師匠様なら家の中にいるで。と、噂をしとったら出てきたな」
家の扉が開き、白と黒の袴を着た男が出てきた。
腰には二本の刀が佩かれている。一つは青紫の柄の『月牙』、そして紅い柄の兄弟剣『陽牙』であった。
共に、大剣豪と謳われたヒュウガ・クラウトの愛刀である。
リンはヒュウガの実の娘であるが、ヴェルドとレオンは養子だ。しかし、ヒュウガは二人も実の息子のように可愛がり、そして剣の道を極めさせるために弟子として厳しく鍛えていた。
「二人とも、サボっていないかい?」
『はい!』
師が声をかけると、ヴェルドとレオンは背筋をぴんと伸ばして返事をした。
柔和な笑みを浮かべるヒュウガは、何度も頷きながらリンに声をかけた。
「リン。裏の畑に行って、野菜を取ってきてくれないか?」
「分かりました!」
リンは元気よく駆けていった。
ヒュウガ曰く、元気なのが唯一の取り柄というが、実のところは弓矢の達人でもある。
最初のコメントを投稿しよう!