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最初はレオンから。
「いくでぇ、お師匠様!」
「ああ、どこからでも来なさい」
ヒュウガは笑いながら月牙を抜き、その淡い紫が混じった白刃をレオンに向ける。
「とぅりゃぁ!」
「ふっ……」
振り下ろされた刃は月牙の峰で受け流され、さらにヒュウガはレオンの足を蹴り払って地に転ばせた。
ここまで二秒ほど。
すぐに立ち上がろうとしたレオンの喉元に、月牙の冷たい刃が押し当てられた。
「う……ま、参った」
「もっと落ちつくことだ。相手の刃を恐れてはいけない。次、ヴェルド」
「はい!」
剣を構えて師の前に立つ。
全身に、冷たい威圧感がひしひしと感じられた。月牙の切っ先を向けられて、自然と足が小刻みに震えだす……。
とにかく気持ちを落ち着かせるために大きく呼吸をして、剣を低く構えて立ち向かう。
「てぃ!」
切り上げと見せかけた真横の一閃。
月牙の刃がそれを防ぎ、すぐに次の攻撃に移ろうとしたが、それよりも早くヒュウガは月牙を振り上げて切っ先でヴェルドの剣を弾き飛ばした。
二人合わせても一分未満……さすがに、ヴェルドもレオンも気持ちが沈む……。
「さあ、まだまだ。レオン、抜きなさい」
「へ~い……」
その後、二人は散々に打ち負かされ、さらに二人同時に立ち向かっても一分も経たずにやられてしまった。
昼になってリンが作った昼食を食べながら、休憩を取った。
だが楽しいはずの昼食も、今日はどこか暗い。
「レオン、何か面白いことを言え」
「無茶言うな!」
「ははは、面白いね」
茶を啜りながらヒュウガは笑う。
時々、この男の性格が分からなくなる。時に厳しく、時に優しく、時に惚けた言動を見せるヒュウガ……しかし剣の腕前は天下一品。
だからこそ、この師に惚れたのだとヴェルドは時々感じた。
養子である自分からすれば父であり、そして大切な師匠だ。この人についていけば、きっと強くなって弱い人々を守ることができる。
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