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と、ヴェルドはヒュウガの穏やかな顔を見上げながら思った。
「ヴェルド、レオン、強さとは何だと思う?」
「剣の腕前!」
「圧倒的な力!」
二人はほぼ同時に答え、ヒュウガは声を上げて笑い転げる。
「はっはっはっはっは! 流石は兄弟。息がぴったりだね。でも、二人とも百点満点でいうと五十点だ。半分は正しい。剣技や力は、確かに強さだ。でもそれだけでは真の強さとは言えない」
「じゃあ、なんなのさ?」
ヴェルドの問いに、ヒュウガは指先を二人の胸に突き付けて答えた。
「心だよ。何者にも屈しない、強い信念だ。相手の刃を畏れぬ勇気だ。そして、いかなる困難をも乗り越えられる冷静な判断。これらが合わさった時、剣は自ずと強くなる」
「……かぁ! お師匠様が言うことは、難しいなぁ」
「今は難しく聞こえるかもしれないけど、すぐに分かるようになるよ。剣だけじゃない。弓矢にも言えることなんだよ、リン!」
「は、はぁい!」
家の中で皿洗いをしていたリンは慌てて答えた。
三人は大いに笑い、ふくれっ面を浮かべるリンを眺めながら、修行を再開した……。
日が暮れる頃……剣を握るヴェルドとレオンは、散々に打ち負かされてぼろぼろになっていた。体の至る所に土がつき、全身は汗にまみれ、手には血豆が幾つも出来あがっている。
「今日はここまで。御苦労さま」
『おわったぁ~!』
ヒュウガが月牙を仕舞うと、ヴェルドもレオンも大の字になって地面に倒れ込んだ。
「ぜぇ……ぜぇ……ほんま……ぜぇ……お師匠様は、強いなぁ」
「大丈夫。レオンも、そのうち強くなれるよ。さあ、二人とも起きなさい。夕飯にしよう」
途端に二人は飛び起きて、家の中へ駆け込んでいった。
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