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『リン! 飯!』
「まだ出来てないわよ! 手伝いなさい!」
『うぇええ……』
へなへなと床に座り込む二人であったが、殺気を孕んだリンの視線に圧されて、皿やら材料やらを出して、一刻も早く食事にありつけるように努力した。
出来あがった夕食をヴェルドとレオンがほおばっていると、ヒュウガは早めに食事を済ませて出かけると言いだした。
「お父さん、どこに行くの?」
「最近、この辺りにオオカミが出没している。少し調べてくるだけだよ。三人は、早めに寝なさい。家の鍵はしっかりとかけておくこと。もしものときは――」
「笛を鳴らせ、でしょ? 分かってるよ。いってらっしゃい」
「これは参ったな。じゃあ、行ってくる。おやすみ」
ヒュウガが出て行った後、しっかりと家の鍵を閉めて三人は床に就いた……。
草木も眠る丑三つ時……不意にリンは目を覚ました。
別に喉が渇いたとか、尿意を感じたわけでもない。ただ、下の階から妙な気配を感じた。
オオカミが来たのかと思って、二階の窓から外を見てみると、よくは見えないが夜の闇に紛れて複数の人間が家を取り囲んでいる。
リンはすぐにヴェルドとレオンを叩き起こし、音を立てないように一階におりた。
まだヒュウガは帰ってきていない。こうなったら自分たちで対処するしかなく、三人は一階の入り口を固く閉ざし、さらにマキビシなどの罠を仕掛けて待ち構えた。
リンが外の様子を伺うために、壁に耳を押し当てると、外の男たちの会話が微かに聞こえる。
「……げ! あの……前に……」
よくは聞き取れないが、何かを企んでいることは間違いない。
とにかくヒュウガにこのことを知らせねばならないので、リンは二階から静かに屋根の上に上がって、思い切り笛を吹いた。
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