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子供とはいえ侮れないと悟った男たちは、今度は二人一組になって襲いかかった。
ただでさえ小回りが利くナイフが、一気に四本も襲いかかってきたのでは堪らない。
何とか致命傷は避けるために必死で防いでいると、男たちはヴェルドたちの目を盗んでリンを突き飛ばし、家の中に踏み込んだ。
「しまった!」
尻もちをついたリンは、すぐに男たちを追いかけた。
敵の目当ては月牙と陽牙だが、今はヒュウガが持ち出しているので心配ない。
ならば敵を振り払って森に逃げ込めばいいのだが、リンたちは自分たちの家が汚されるのが嫌だった。
それがどれほど愚かだとも知らずに……。
リンが男たちを追ったこととは知らず、ヴェルドとレオンがひたすらに敵と戦っていると、二階の窓が大きく開かれて、男たちが見せつけるように拘束されたリンを掲げた。
「おい、小僧ども! このお嬢さんがどうなってもいいのか?」
「なに!?」
二人が二階を見上げると、口を塞がれてもがいているリンが目に入った。
「こんの、卑怯者が!」
レオンが怒声をあげるが、男たちは笑みを浮かべるだけ……。
「このお嬢さんの命が惜しければ、大人しく剣を捨てろ。さもないと、真っ赤な花が咲くぜ?」
ナイフがリンの喉元に突き付けられ、彼女の目に恐怖と涙が浮かんだ。
漆黒の天から雨が降り注ぎ、ヴェルドたちを濡らしていく……。
また、激しい稲光が夜空に走り、雷が怖いレオンは足を震わせた。
「おい、しっかりしろよ!」
「せ、せやかて……ひぃ!」
近くの大木に雷が落ち、レオンはいよいよ恐ろしくなって身を屈めた。
そのとき、闇に包まれた森から紅い閃光が走り、一瞬にして捉えられていたリンが敵の手中から解き放たれた。
二階から落下するリンを受け止めたのは、他ならぬヒュウガであった。
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