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「お父さん!」
「すまない、戻るまでに時間がかかった」
娘を地に下ろし、ヒュウガは静かに男たちを見回して口を開く。
「さて……うちの子供たちに手を出した以上は、覚悟してもらおう。生きてこの森から出られるとは、思うな!」
強烈な殺気が飛ばされ、男たちは全身に衝撃を受けて固まった。
ヒュウガは腰に佩いていた陽牙を抜き、構えることなく男たちに向かって踏み込む。
「紫電、壱閃!」
電光石火とはこのことか、ヒュウガの一撃によって瞬時に四人もの男たちが両断された。
紫電……かつて、剣士たちの間で恐れられた古の殺人剣。
そのあまりの速さと殺傷力から、使い手はいかなる手段をもってしても撲滅された伝説の剣技。
それを扱えるのは、この時代、ヒュウガとその弟子たちだけだった。
また、紫電の技に耐えられる剣も一握りであり、この陽牙と月牙も長年の経験に基づいてヒュウガ自らが鍛え上げたものである。
それはともかく、情け容赦なく敵を斬り捨てたヒュウガは男たちに向き直る。
右手に握る陽牙の刃が雷光によって怪しく光った。
玉の如き刃には微かに茜色が混じり、まるで刃が燃えているように思わせる。
「君たちの目的が何かは知らない。また知りたくも無い。なぜなら、ここで君たちは全員私の刃によって地へと還るのだから!」
「うるせ――」
全てを言い終わらぬうちに、既に首は胴と離れていた。
「この化け物め! 応援を呼べ!」
二階にいた男が指笛を鳴らすと、森の奥から男たちの仲間が飛び出してきた。
いかにヒュウガの剣技が無敵とはいえ、数が数だ。ヴェルドたちを守りながら戦うのはあまりにも不利。
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