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「私はこの国の王だ。ただの一人も、国民を悲しいままにしておくことはできない。それにお前も、これからどうするというのだ?」
「…………」
またも黙りこんだ。
これからどうするかなど、全く考えたことが無かったから……。
「俺は…………人殺しだ……」
「兵士に賊を討伐するように命じている私も、人殺しだ。それにお前は私の臣下。命令に逆らうことは、できないぞ?」
「…………承知」
面倒なことになりそうなので、適当に頷いておいた。
承諾してくれたことにアーサーは喜び、ヴェルディンのために用意した鎧を持ってこさせた。
漆黒の鎧……それを見たヴェルディンは、怪訝な顔を浮かべる。
「黒は全ての色を包み込む。この鎧を着て、お前の悲しみも塗りつぶされるように願って作らせたものだ。受け取ってほしい」
こんな鎧では体の動きが鈍るのではないかと思って、胴の部分を持ってみると、これが驚くほどに軽い。
かといって脆いわけでもなく、下手な剣ならば簡単に防げるだろう。
剣士として鎧に頼るのはどうかと思われるが、将軍になることを引き受けた以上は受け取らないわけにはいかない。
「…………感謝する」
「うむ。頼むぞ。ああ、それから、将軍になったからには、そちにも名を与えねばなるまい」
「……名?」
「うむ。そう…………フィン・デュランボルグ卿というのは、どうかな?」
「それで……構わん」
「爵位を与えて喜ばなかったのは、そちが初めてだな……これよりは、この雪銀城に暮らすがよい」
「……御意」
こうして、将軍フィン・デュランボルグ卿ヴェルディンは宮仕えをすることとなった。
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