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奈落の神殿の入り口を後にして、二時間が経過した。
未だに弘樹達は砂塵の海を歩んでいる。砂漠の一族の野営地からかなり遠い位置に来てしまったようで、ルピスもここがどこだかよくわからないらしい。
要するに……道に迷った。道など無いのだが、迷ったのだ。
周囲を見渡しても、見えるのは広大な砂丘だけで崩壊した砦もオアシスも何もない。
上を見ても雲ひとつ浮かんでおらず、ただ太陽のみが天に座している。
「さてと……これからどうしようか?」
弘樹の一言が沈黙を破った。
「どうするも、こうするも……位置が分からないんじゃどうしようもねぇだろう。いわば漂流だぜ」
「砂の海だけに? あはは! ギルっち上手! あはははは!!」
「笑える余裕が羨ましいわ……」
額の汗を拭いながら、ミオが呆れた風に言った。
弘樹も心中でミオと同じことを感じながら、カバンから方位磁石やら地図やら出していると、先ほどからずっと黙っていたキヌアが、弘樹の袖を引いてきた。
「どうした?」
「ヒロキさん……なんだか……頭が……ボーっと、して…………」
「お、おい!」
暑さにやられたキヌアが崩れるように倒れかけ、熱い砂に沈む前に弘樹が抱きとめた。
彼女は額から大量の汗を流し、肩で息をしている。
「熱中症だ。早く日陰に……」
「待って。任せて!」
スキップしながらルピスが近づき、キヌアの額に手を添えて能力を発動させた。
すると彼女の手から白い冷気が溢れてキヌアの体を優しく包み込み、さらに水滴を落として、キヌアの体温を徐々に冷ましていく。
「ふぇ……冷たいです」
「でしょ? あ、あそこの砂丘の陰で休もうか」
比較的涼しい陰にキヌアを寝かせ、これまたルピスの水でぬらしたタオルを額に乗せて暫し休息を取る。
ついでに朝食も用意した。
乾燥した肉とパン……水なしでは中々食べにくいが、今は水に苦労しないので存分に食べた。やはり戦いの後は空腹になるものだ。
食べながら、弘樹達は昨晩の神殿について話し合った。
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