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(いや、確かにあいうえお順で並んで[みやま]は後半だから…ってなんで環さんが隣なんだよ!)
パニック状態。
だって、環さんは僕の憧れの人だから。
その人がこんなに近くにいるってだけで頭がくらくらする。
初めて環さんに会ったのは図書館だった。
目当ての本がなかなか見つからなくて、棚の前でつっ立っていたら、声をかけられた。
「探しているのって、これ?」
振り向いて、僕は固まってしまった。
さらさらの長くてまっすぐな黒髪。
本を差し出す、白くて華奢な手。
優しい笑顔。
たかが十数年しか生きてないけど、今まで見た中で1番綺麗な人だと思った。
「違った…かな?」
困ったように彼女が言って、僕は我に返った。
「い…いや…それで…」
僕は人と話すのが苦手で、女の子とはもちろん、男相手にもまともに喋れなかった。
うるさいくらいに心臓が脈打っている。
「よかった。はい、どうぞ」
本を受け取る。
彼女はふわっと笑ってこう言った。
「その本おもしろいよね。
私も好きなんだ」
彼女の名前や、この学校で<王子>と呼ばれていることを知ったのは、それからすぐあとだった。
僕には手の届かない存在であることも、同時に知った。
それから、彼女は僕の憧れの人になった。
僕は彼女を取り囲む人々の1部になることにしたんだ。
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