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(なのに…!)
「…ょー」
近い。
近すぎる。
「涼ー」
これじゃあ心臓が持つかどうか…
いや、絶対持たない…
「…っていい加減気付けっ!」
「うわぁっ!」
すぐ近くで大声を出されて、僕は飛び上がった。
慌てて振り向くと、そこには女の子が立っていた。
「な…んだ…スズか…」
「なんだって何よ!
それに、<スズ>って呼ぶのやめてって言ったでしょ?」
伊永 美鈴(いなが みすず)。
幼なじみってやつで、家が近所のせいか昔から仲がよかった。
<スズ>って言うのは美鈴の愛称なんだけど、いつからかこうやって訂正されるようになった。
そうやって呼んでたのは僕だけだったせいもあると思うけど。
「涼が孤立してんじゃないかー、って見に来てあげたのに、その態度は何よ!」
困ってる人はほっとけない子で、ここんとこは前以上に怒りっぽい。
「ごめん…スズ…」
「男のくせにすぐ謝るなっ!
それにスズって呼ぶなっ!」
最近はいっつもこんなやり取りばっかしてる。
「涼はこれだからいっつも…」
「あのさ、そろそろチャイム鳴るよ?」
「へ?あ、ホントだ。あたし一体何やってんだろ!」
「………ありがと、スズ」
教室から出ようとしていた美鈴が、ぴたって動きを止めた。
そしてこっちを見ると、
「べーーだっ」
バタバタ、美鈴が廊下を走っていく。
美鈴と話してるうちにドキドキもおさまった。
美鈴には感謝しなきゃね。
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