森へ…

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「リルケ!」 囁くような呼び声が聞こえる。 「!!」 今までベッドで居眠りしていたリルケは、シーツの中からゴソゴソと這いだし始める。 片目を軽く擦りながら起きあがると、ショートボブに切りそろえられた金色の髪が、空色の瞳の前で揺れる。 「ラン!」 声の主を確信した途端、昨日の夕刻に交わした約束を思い出し、部屋の窓から飛び出した。 サァ…と夜の冷えた風が、リルケの柔らかな首筋を撫でる。 (やった!やっとで森に行ける!) 自然に笑みが洩れてしまう。 家の門の前では、ランがサンマウス号(ランの自転車)に乗ったまま、大きく手を振っていた。 リルケもランの両肩に両手をおいて、サンマウス号にまたがる。 『森へ行こう!』 誰もが寝静まった深夜、目と目で合図を交わし頷きあったのを最後に、2人を乗せたサンマウス号は、あっという間にリルケの家から遠ざかっていった。
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