*6段*

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『…』 嬉しいはずの佐伯さんの電話、早く切りたかった。 『あの…携帯いいですか?お昼休み終っちゃいますので。今、控えられます?』 携帯の番号を伝えた。 …佐伯さんは驚いたようだった。 これが、私にとってまだ未熟な私にとって気持ちの整理を付けられない、長い「想い」の幕開けになるとは思いもしなかった。 …もしかしたら、我儘な私は、佐伯さんとどんな形でも繋がっていたかったのかも知れない。 佐伯さんに自分の気持ちさえ知られなかったら、知り合いの女の子でいられる… 何を望んでいる訳ではない。 始めっから何も望んでない…だって、佐伯さんの指輪は私なんて相手にしてないもの。 麻田さんと付き合うことも決めた。 だから… …… ままごとのような恋愛しかしていなかった私に、大人の男性のことなんて判るはずもなかった。 知れば知る程、抜けられない… ただ見ているだけで虜にさせる「男」を知らなかった。 知っていれば、この時の電話を最後に佐伯さんとは会うこともなく、勿論、携帯の番号なんて言うはずもなかったのに。
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