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『失礼致します。』
多分、こんな時は営業用のスマイルを浮かべながら進むんだろうけど、カタカタなるお湯呑みが気になり手元を必死な顔で見詰めていた。
お客様の確認もできない。
『いらっしゃいませ…』
『お、新しい子?』
2人並んだ向こう側から声が聞こえる。
『です。でも営業じゃないんですよ』
お茶をテーブルに出した時、何気なく手前の人の手に目がいった。
綺麗な手
そして、指輪。
顔すら見ていないその人
結婚してるんだ。
そう思った。
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