貴方への階段

＊３段＊

『大丈夫だよ～』

『あっこの辺で…一人降ります』

運転手さんにそう告げると車が停止した。
車を降りるにも名残惜しい。

でも、私はできる限りの平静さで

『今日はありがとうございました。本当にすみません、ここまで…じゃおやすみなさい…ま…た…』
と言えた。

来月に…言いたかったけど、言えなかった。

『おやすみ、また来月に』

変わりに佐伯さんが言ってくれた。

…私の考えてること何でも判っちゃうんだ…

手を振って帰って行った佐伯さんの乗るタクシーが見えなくなるまで立ちすくんでいた。