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「喜美ちゃん…もう、許しても良いんだよ自分を」
「………」
明人と喜美、互いに喜依の事で責任を感じ続けていた。
喜美が一度明人に振られた時も
喜依を死なせなのは自分だ
と思ってしまったのはここにあったのだろう。
「………」
喜美は辛そうに唇を噛み何かに堪えるように俯く。
「もう、自分を責めなくて良いんだよ」
「あ…ああ」
喜美の瞳にはもう何度目なの涙がつたっていた。
そして薬指にはめた玩具の指輪を目の前に持って来る。
「これからはライバルだなっ」
「うぅ…喜美ちゃんが勝つに決まってるよ。
だって喜美ちゃんのポイントしか上がらないよ」
喜依は寂しそうな顔をする。
もう喜依のポイントは上がらない。
今は喜依の方が高くても時間が経てば追い抜かれる。
だって…
「もう、明人くんの側にいられないよ」
「…」
喜美はその言葉に改めて喜依がもう死んでしまった事に気づく。
「最後に
喜美ちゃん手を出して」
喜依は手を前に出し喜美の手をとる準備をする。
喜美は素直に言われた通りに従い手を出す。
その手に喜依の白く冷たい手が重なり合う。
いつかこうして喜美ちゃんと話す事が夢だったよ。
今出来る事はこれくらいだよ、受け取って…
喜依の体が月光のように青白く光りその光りが喜美へと移りやがて喜美の中に消えて行った。
「私の力だよ」
突然の事に戸惑う喜美にそう答える喜依。
その体は薄れかけている。
「物体から未来と過去が読み取れるはずだよ」
「ま、待ってくれっ!!!」
喜美は必死に喜依をこの世に止めようとする。
手を前に伸ばし喜依を掴みそれでも消えて行くのを止めれない。
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