憧れのバンドマン

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私が中学生のとき、バンドブームってやつが到来した。昔もバンドブームってあったらしいけど、そのときとはまた違った感じで、爽やかで長身の格好良いお兄さんたちが四人くらいでバンドを組んで、ロックテイストの曲を演奏する。 ラブソングや友情について、未来とか青春とか、自作の曲歌って、若者たちを励ますギターのお兄さん。元々音楽が好きな私は、そういったいわゆる邦楽ロックバンドってやつが好きになった。 学校でよく目立つタイプの男子たちはこぞってバンドを組んだ。注目を浴びたい、自分の気持ちを伝えたい、あるいは女の子にモテたい、って気持ちで、学祭なんかあると有志発表で体育館のステージに上がる。 私は目立つタイプじゃなかったし、男の子が苦手で自分から話しかけることなんてほとんどなかったから、そういう身近で組まれるバンドと関わることはまずなかった。 大好きなバンドはテレビとコンポの中にしかいなかった。ライブハウスは怖いから行かなかったし…… 初めて本気で好きになったバンドは、メンバー全員日本人なのに横文字のバンド名を付けていた。 彼らの曲は歌詞が良かった。読書が好きな私は歌詞を重視して曲を聴く癖があった。彼らの書く文学的で儚い歌詞は私の好みにぴったり。今でも辛いことがあったら彼らの曲を聴いて、自分を励ましている。 そこまでバンドが好きなのに、私は中学生のときも高校生のときもライブに行かなかった。大好きなバンドでさえ…… テレビで見たライブ映像。赤いライト黄色いライト青いライト。観客の声援。盛り上げようとするメンバーたちに、CDで聴くのとは少し違った曲。 直接見たい! だけど…… 地味で真面目な私。バンドマンとか、そういうのとは一生直接関わったりしないんだろうなあ……そんな風に思って、大学生になった。 まさか、初めて付き合う人がバンドマンになるなんてこと、しかも、その付き合いがめっちゃ大変になるなんてことも、思いもせずに……
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