魔法

20/23
前へ
/218ページ
次へ
どういう意図かは分からないが… 私の反応を見たくて、あんな事を言ったのは推測できる。 だったら負けないから! 私は視線を反らさずに、毅さんを真っ直ぐに見つめた。 「うん。これなら大丈夫だ」 毅さんは先程とは打って変わって、穏やかな表情になった。目の奥の鋭い光もいつの間にか消えていた。 そんな毅さんの態度の急変に、全く着いて行けない私は、亮に助けを求めようと… 「亮の事、宜しく頼むよ。杏ちゃん」 毅さんはそう言うと、振り返りかけていた私の頭をポンポンと優しく叩いた。 その仕種は亮とやっぱりそっくりで… 私は益々混乱した。 「ちょっと!兄貴、わたしの杏に触らないでよ」 私達のやり取りに気付いた亮は、私を強引に引き寄せると毅さんを軽く睨んだ。 「可愛い妹との親睦を深めてただけだろ!亮には勿体ないくらいの子だから、ちょっと興味はあるけどな」 不敵な笑みを浮かべる毅さんは… やっぱり亮と似ていた。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11439人が本棚に入れています
本棚に追加