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それでも彼は私に言い続けていた。
「お前だけを愛してる」
彼が私を抱きしめて、私も彼を抱きしめ返す。
その間の温もりが荒んだ私の心には何よりも甘く染み込んでいった。その温もりの中に、まだ私へ傾いている彼の気持ちを探しては満足している自分がいた。
甘い蜜を私は捨てきれなかったのだ。
惨めだということも、哀れだということも、全て承知で私は彼にしがみついていた。何も気づかない振りをして、彼を愛しつづけていた。
そして、彼もまた優しすぎたのだ。
何も気づかないままに、私を愛する振りをした。
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