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彼が子どもの存在を知っていたかどうかは知らない。けれど、彼女とのそれほどまでに深い関係を続けていたのは事実だ。
千個の嘘よりもたった一つの真実が欲しかった。
私が泣くはめになろうが、もうどうでもよかった。初めからその真実さえあれば、私はあの甘い蜜にしがみついていなくてもよかった。今よりももっと早く胸が楽になっていたはずだ。
街路樹には葉を出す前に落ちてしまった芽が無残にも踏み潰されていた。それが私の心を締め付ける。
私は今からあれになるのだ。
それとも、もう既にあの姿だったのだろうか。
答えは出ないし、今更出たところでどうしようもない。
このぐるぐると廻りつづける迷路から抜け出ることさえ出来れば、もう後はどうでもよかった。
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