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『いかが?』黒木さんは僕達に尋ねてくる。
『お、おい!ゆうすけ!なんか言ってやれ。』遼が僕に振る。
『あ、ああ、ええと、素晴らしい声の安定感だったよ。黒木さん。』
僕は精一杯褒めてみせた。
『あら、嬉しい。でしたら、もう一曲。』
周りの顔が青ざめる。
だが、ノーとは言えない。
『ど、どうぞ…』
この後、彼女は僕達のことは気にせず歌い続けた。
プルルルル…ガチャッ。
カラオケ屋の受付嬢:『終了10分前で~す。』
僕は内心ホッとした。
『黒木さん、終了10分前だって。』
『まだまだ歌い足りませんわ!延長戦突入ですわよ!』
…マジッ?
『ガハハハハ!いいぞ~!ガンガンいこーぜー!』
ただ1人、遼だけノリノリだ。
結局、2時間延長。
その間彼女はほぼ1人で歌い続けた。
『帰りが遅くなりましたわね。私がお送りします。』
僕達は甘えることにした。
執事石野:『どうぞ…』
助手席にアズサが、真ん中の列に黒木さんと遼、後ろに僕とまおちゃん、桜井さんが乗った。
何やら前の2人で話している。
『貴方は野球をやっていらっしゃるんですよね?』
『ああ!一応ピッチャーだ!』
『ピッチャー?それは凄いの?』
『もちろん!ピッチャーがいて、初めて試合が成り立つんだ!』
『なら、貴方は凄いのね。』
『えっ…?』
『三上遼でしたよね。貴方の名前、覚えておきます。』
『あ、ああ…。』
そこで2人の会話は終了した。
家がカラオケ屋から近い順に、アズサ、桜井さん、遼、そして僕とまおちゃんの順で送ってくれた。
家の前で降りた時、僕とまおちゃんは少しの間2人っきりになった。
『黒っち、すごかったねぇ~。』
『あ、ああ。本当に。』
『じゃあ、ゆうすけ、またねぇ~。』
『うん。おやすみ。』
こんな短い会話だったけど、僕は満足してしまう。
ルンルン気分で家でのんびりしていると、僕のケータイに着信が入った。
誰だろ?…遼だ。
『もしもし?』
『…。』
『どうした?遼?』
『なあ、俺…どうしたら良いんだ!!』
『えっ?何が?』
『好きなんだよ!あいつに惚れた!』
『なっ…だ、誰に…』…まさかマオちゃんか?
『黒木…マイに…』ふぅ~…良かった。
『黒木さんか、確かに綺麗だしな。応援するよ。』
『ほ、本当かっ!?』
『ああ、任せておけ。』
『じゃあ、明日早速作戦会議だ!』
『マジッ?』
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