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【黒木マイ】は、薔薇に視線を集中させていた。
僕はその姿に数秒目を奪われた。
ハッと我に返り、本来の目的を思い出す。
『あ、あの…!』
僕の呼び声に静かに反応しゆっくりと振り向く。
『…何ですか?』
『き、今日は君に用がある!一緒に、か、カラオケに行かないかっ!』
『えっ…私と…?』
普段は澄ました表情の彼女も少し目が見開いた。
『あっ、いや、だ、ダメなら良いんだ。ごめん。』
僕は半ば諦めた。
『い、いえ…私は、嫌とは申しておりません。』
彼女は目線を落としながら言った。
『じゃ、じゃあいいの…?』
僕はすかさず聞き返す。
『私は…』
僕はゴクリと唾を呑む。
『私は、今まで、カラオケなどという所に伺ったことがありませんでしたので、一度くらいは伺いたいと思っていたのです。ですから…構いません。』
最後の構いませんの時にようやく笑顔になった彼女。
僕も笑顔で返した。
それにしても、知的な印象だな。
『じゃあ、来週の水曜日にカラオケ屋で。』
『ええ、分かりましたわ。』
僕は最後の仕上げに家に帰った。
桜井さんにマオちゃんを誘ってもらわないと。
僕は家につき、受話器を上げて桜井さんの家に電話する。
ピ、ポ、パ…
『もしもし、桜井で~す。』
『あっ、桜井さん?有馬だけど…』
『あ、有馬くん?やっほ~』
『実はさ、来週の水曜日にカラオケやるんだけど行かない?』
『マジ~?いくいく!』
『あ、あと桜井さんマオちゃん誘ってもらえるかな?その…あと1人増えると割引されるから…』
『ハッハーン(笑)分かったわ。じゃあ来週ね!』ガチャッ。
マオちゃんとは違って、感の鋭い女の子だ。
とりあえず、みんな揃った。
疲労困憊。
さっきまでお昼だったのに、もう日が沈んでいる。
プルルルル…
電話だ。なんだろう?
僕は電話に出ると、 『モッシ~、優祐か?俺だ!三谷遼だ!』
『あ、遼か。』
『今部活終わったんだけど、どうだ?集まったかぃ?』
『ああ、何とかな。』
『そうか~、さっすが優祐ちゃん!狙い通りカワイイ女の子誘えたか?』
『カワイイかどうかは判らんが、4人とも女の子だよ。』
『マジ!?優祐ちゃん天才!!今日からナンパの優祐って呼ぶか!』
『ナンパ…』
『ジョークだろ~。』
『じゃあ、切るよ。』ガチャッ。
カラオケか。みんな何歌うのかな?
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