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幻想郷のどこか。いや、もしかすればここは、幻想郷ではないのかもしれない。
そもそも、幻想郷自体が未知なのだ、分からなくても無理はないだろう?
とにかく、そんなよく分からない場所にある屋敷。
そこには、八雲 紫(やくも ゆかり)と呼ばれる、妖怪の賢者が、八雲 藍(やくも らん)と呼ばれる自身の式神と共に暮らしている。
正確に言えば、紫は現在睡眠中。部屋の中には布団がしかれ、紫は掛け布団を体に被って寝息を立てている。
実に準備の良いことに、枕の横には喉が渇いた時のためか、水が入ったコップが置かれている。
式神である藍は、紫の寝ている部屋から少し離れた部屋の縁側で、自身の式神である橙(ちぇん)と、猫じゃらしで遊んでいる。
特に何もない、この八雲家。外からは日差しが差し、暖かい気候で家の中は満たされている。
「んん……」
と、ここで紫が、コップの上に隙間を寝ぼけて開く。
その隙間から、何かがポチャリと水に落ちる。
それは……見た目からも良いものでないとわかる、黒い丸薬。
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