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「橙、少し紫様の様子を見て来るから、日向ぼっこでもして、待っててくれ」
「はーい」
藍は縁側から立ち上がると、渡り廊下を辿って、紫の寝室へと向かう。
そうしている間にも、黒い丸薬は形を崩し、水と馴染んでいく。
藍が寝室へ辿り着くのが早いか、それとも丸薬が溶けるのが早いか。
寝室の障子の前に辿り着いた藍は、その場で正座し、両手で慎ましく、障子を開く。
「……起きてらっしゃいましたか」
「あら、藍。様子見に来てくれたの?じゃあ、丁度いいわ、新しい水をお願い」
紫が差し出したコップには――水が入っていなかった。
「分かりました」
そう言った藍は、紫から空のコップを受け取ると、一礼してから障子を閉めた。
「さて、もう一眠りしようかしら」
布団を被り、紫は一定の呼吸を始めた。
……それは、悪夢の始まりでもあった。
神でさえも、こうなることは予想出来なかっただろう。いや、これは神をも巻き込んだのだ。
今始まったのは、悪夢と言う名の戦いなのだ。
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