28人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ…気づいてた?」
何を、とは聞かなかった。
気づいていなかったといえば嘘になるだろう。しかし、確証を持っていたわけではなかった。
「気づいてなかったんだ?」
無言でいたことを、気づかなかったと解釈したのか、彼、リオは自嘲気味に笑った。
「僕はね、全部わかってたよ。こうなるだろうってことも…」
首を絞める手に今より強い力を込めれば、相手は苦悶の表情を浮かべる。
――ゾクリとした。こんな表情を見て興奮する自分に嫌気がさす。
「拾われた時からずっと…いつかこんな日がくると思ってた。…でも、僕はこうなることを願ってたのかもしれないね」
締め付ける手を払いのけようと爪を立てても、リオの手は締まる一方だった。
人間ごときに自分が屈するなど、おかしな話だ。普段の彼ならこんな力、簡単に払いのけられただろう。しかし、何かがおかしかった。
溢れるような力を感じない。
最初のコメントを投稿しよう!