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「ゼダ」
彼が呟くように呼べば、どこからともなくそれは現れた。
「終わりましたでしょうか?魔王様」
表情のない無機質な顔をした機械人形のようなそれは、地に膝をつき恭しく頭を垂れながら問う。
しかしその場を見れば、答えなどは簡単に想像出来るものであった。
「先に帰って、湯の用意をしておいてくれないか」
彼、魔王はそういうと、踵を返し歩き出す。
「畏まりました」
ゼダは頭を垂れたまま、是の意思表示たる言葉を述べると、そのまま解けるように姿を消した。
振り向きそれを確認すると、魔王はふたたび歩き出す。
特に目的があるわけではなかった。
ただ、この場をぼんやりと照らす月が美しく、魔王はそれがもっと近くに見えるよう足を運んだ――。
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