【1】イベント

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~ テラ ~ 歌い終えたラブが入ってくる。 『お疲れ様、ラブ。あの新曲は今度の子供の日のテーマソングね。いい歌でしたわ。テレビ中継して、宣伝なさればよろしいのに。』 『ありがと、ヴェロニカ。』 ボランティア企画を、営業的に使いたくないというのが、ラブの意思であったし、予定外の披露曲でもあった。 『今のところ、問題はないようね。』 ヘブンの犯行予告以来、厳重な警戒を敷いていた。 『お嬢様が、何人かお気に入りを見つけた様っすよ。』 T2が、つぶやく。 『T2にもちゃんとなさる様に言ってくださいませ。私は、だだ…ちょっと怪しい感じの・・・』 『いかつい顔して、額に傷がある大男か?』 ニヤっとT2。 『・・・え?はい。その殿方は、歌い終わったラブを追う様に、会場から出て行かれましたので・・・って、何でT2が知ってるのでございますか?』 『確かに、あれが会場にいちゃあ、怪しいよな、ほら。』 入り口に「怪しい大男」が立っていた。 『あら!大山さん。』 神明館で空手の師範を勤める、大山薫である。 『失礼します、ラブさん。少しお願いがありまして・・・』 その時、ラブの携帯が鳴る。 マネージャーのメイからであった。『ちょっと待って・・・。メイ!遅いじゃない!!』 彼女は、自分を捨てた母親が死んだことを知り、高知へ行っていた。 (小説『永遠の絆』) 『ごめん、ラブ。色々と母のことを聞いてたりして・・・。』 『どうせ、夕べ飲み過ぎたんでしょ?誰にも危害は加えてないでしょうね。』 図星であった。 『いや、あの・・・。たぶん・・・。ねぇ、良介さん。』 苦し紛れに、隣にいる山口良介に電話を渡す。 『あ、ああああの、山口と言います。ラ、ラブさんですか?すいません、私が引き止めてしまって・・・。』 『あら、手紙をくれた方ね。ありがとうございました。メイが厄介になった様で。彼女、酒癖わるいから、大丈夫でしたか?前なんか、うちの新人歓迎会で、鼻に噛み付いたりなんかして・・・。』 『あ、ああ・・・大丈夫です。これからも、芽衣(メイ)ちゃんのことをよろしくお願いします。』 携帯をメイに渡し、鼻の絆創膏に手をやる。 『ほらね! 今から飛行機で戻るからね~。んじゃ!』 携帯を閉じる。 『全く・・・メイったら。すいません、大山さん。ここでは何ですから、お茶でも飲みながら、話しましょ。』 そう言って、ラブと大山は、部屋を出て行った。
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