【13】聖なる拳

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【13】聖なる拳

ラブが、無表情で立ち上がる。 肩から片腕がブラブラとゆれている。 (大山さん・・・あなたでは、やっぱりこいつには勝てないよ・・・。) 『聖拳ってのは出さないのか?もっともそんなものは、だだのでまかせだろうがな。』 『フゥ・・・。』 やられた左腕を右手で高く持ち上げるラブ。 『ハァッ!』 その腕を一気に振り下ろす。 「ガキンッ!」 肩が、はまった。 折られる瞬間に、自ら関節を外したのである。 もちろん、大男でも悲鳴を上げるほどの苦痛を伴うワザであった。 『そうですね。少しだけ本気を出してあげましょう。お前・・・この私を、舐めたね!。私を怒らせたことを、後悔しなさい。』 この丁寧な口調は、とてつもない怒りを放つ時であった。 大きく息をして、目を閉じる。 『お芝居はおわりだ、お嬢ちゃん!!』 マイクが、今までで一番に早い蹴りを放つ。 それがラブの顔を捉えたと思った瞬間! 「シュパンッ!!」 マイクのアゴをラブの美しい脚が蹴り上げていた。 マイクはおろか、館内の誰の目にも留まらぬ超スピードの蹴りである。 一瞬にして、そのアゴは粉々に砕けていた。 その破壊力は、超人的なスピードと、それに耐えうる体にあった。 10センチ程、浮き上がった長身は、闘技場に戻ると後ろによろめいて下がる。 その体を、舞う様に回転しながらラブの脚が横に、切る。 『ガハッ!!』 細い脚がアバラを砕き、脇腹にめり込む。 そのままの勢いで、くの字に折れ曲がったマイクの背後に ラブがつき、背中の中心に拳を合わせる。 『これは、大山さんと、そのお兄さんの想いよ。地獄に落ちろ!!』 一瞬、背中に当てたラブの手が光る。 マイクの背骨から脳にまで、強大な衝撃が走る。 死闘の幕が下りた。 マイクの長身は静かに倒れ、それっきり、動くことはなかった。 この一撃は、その後、ラブを新たな窮地へと導くのであった・・・。
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