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悲しみが癒えるまで
夜中彩は部屋で一人泣いていた‥‥
恋人の修二が亡くなってしまったこの悲しみや現実を、正直まだ自分自身どう受け止めればよいのか全くわからずにいた‥
「うっ‥気持ちが悪い‥‥」
食事を採れなかった彩を心配し、食べられる様にとわざわざ雑炊を作ってくれた雫の気持ちと、あんなにちっちゃな綾が雑炊を一口分ずつレンゲで救い、一生懸命に冷まし彩の口にいれてくれた二人の優しさを無駄にしたくなかった為、何時間か前から戻してしまいそうなのをずっと我慢していた。
「ぅ…やっぱり駄目…。」
リビングが静かな事を確認すると、そっと部屋のドアを開け彩はトイレに急いだ。そして食べた物を全部戻してしまった。
「グスンッ…ごめんね雫…グスンッ…ごめんね綾…。」
眠っている雫を起こしてしまわぬ様洗面所で静かにうがいをし顔をあげると、鏡に映っている自分の顔に驚いた。肌は血色が悪く目はうつろで瞼が腫れている‥
彩は部屋へ戻ると鏡の前に座り、自分の顔をずっと見ていた。
「酷い顔‥‥。
駄目ね、私、こんなんじゃどうにもならない‥。
みんなに心配ばかりかけてしまう‥‥
今までだってずっと心配かけて来たのに‥‥」
窓の外が白々と明るくなり始めた頃、彩は家を出る事を決意した。
荷物を鞄に入れ支度を済ませると、雫と千雪と綾、そして他のみんなに心を込めて手紙を書いた。
雫と千雪への手紙はこのままテーブルへ置き、他のみんなには手帳から住所を移し、宛先をしっかり書くと後は切手を貼るだけの状態にし、一人一人の顔を思い出しながら便箋を丁寧に折り封筒に一枚ずつ入れて行く‥。
涙がボロボロと流れとまらない‥
鞄に封筒を入れチャックを閉めようとした時、【ひだまり】でとった写真の中にいる仲間達がリビングボードの中で笑っているのが見えた。
彩は泣きながらその写真を写真立てのまま鞄に詰めると、部屋を一周見渡し、涙を手の甲で拭いながら部屋を出て行った……
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