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大きな洋風の校舎に人が吸い込まれていく。
誰もが口々に「おはよう」などと言っているなか、一人、黙って登校する少女がいた。
涼しげな藍の瞳で道行く生徒をガン睨みして退かしながら、通り抜けていく。
オルグは朝が嫌いである。
低血圧なのか、眠くてイライラして、今の彼女に何か仕掛けるのはさながら、地雷をクッションがわりに座るようなものである。
が、それでも仕掛けるやつがいた。
「オールーグー!!」
後ろからくる軽快な足音が、どんどん近づいてくる。
「おっはよーぅ!!」
飛び掛かってきたきたそいつを、振り返る勢いで思い切りまわし蹴る。
攻撃を予想していなかったのか、そいつは綺麗に吹っ飛んでいった。
しばらくして、痛そうに頭を抱えながら戻ってきた。
「いってぇなー、朝からまわし蹴りはないだろ。」
「いきなり飛び掛かってきたリムが悪い。」
なんだよー、と不満げにつぶやきながら横に並ぶ。
やっぱりオレ、嫌われてんのかな…。
リムは考えていた。
考えていたので、オルグが自分に話しかけているのに気が付かなかった。
いきなり、後頭部に痛みがはしる。
「い゛っ?!」
「ちょっと!僕の話聞いてた?!」
慌てて斜め下をみると、オルグがプリプリ怒っていた。
大きな瞳がこちらを睨んでいる。
「え、えへ、何?」
とりあえず、愛想笑いを浮かべてみたが、顔が恐怖でひきつっているのがわかる。
「何じゃない馬鹿リム。さっきから話しかけてるのに、全部無視して…。」
さっきまで刺さるようだった瞳に、うっすらと涙が浮かぶ。
意外と寂しがりやらしい。
「ああ、ごめんごめん!!ちょっと考え事してて…。」
必死にご機嫌を取ろうと、謝り続ける。
そんなことをしているうちに、教室についてしまった。
「あ、もう着いちゃったな。んじゃ、またな!」
「…うん。」
わがままなお姫様はうっすらと、返事をした。
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