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春らしい強さの風が、脚の周りをうろつく。
真新しい制服に着られた新入生が続々と入って来るのを、彼は新しい教室から眺めていた。
「…春だなぁ。ちょっと寒いけど。」
彼はリム。
くせっ毛の赤毛をゆるゆるとなびかせて、少ししんみりとしながらつぶやいた。
何故彼がしんみりとしているかというと、時間を間違えて、一時間も早く来てしまったからだ。
「馬鹿だなぁオレ。ほんと馬鹿。」
あと20分は寝れたのに、テレビももっと見れたのに…。
などと、グダグダ考えても誰も来ない。
そうして、10分がたってしまった。
とても何かを無駄にした気分だ。
「あれぇ?リムさん?どうしたんです?こんな早くに。」
キョトンとして教室の入り口に立っていたのは、事務希望中のダニエルだった。
可憐で女の子のような顔を不思議そうに曇らせて、こっちに来る。
「あはは、ちょっと早くきちゃって。で、ダニエルは?」
「僕ですか?」
可愛らしく首を傾げると、ポニーテールのくせっ毛白髪が動きについて揺れる。
「僕は、気になる噂を聞いたので、確かめに来たんです。」
「?噂って?」
「ほら、あれですよ。」
ピンと人差し指を立てて、自慢げに言った。
「期待の新入生ですよ!なんでも、かなり強くて、しかも最年少だそうです!」
なんか聞いたかも、そんな話。でも興味ないしなぁ…。
軽く聞き流そうとしているリムをダニエルが引っ張った。
「行きましょうよ!もしかしたら、もう来てるかも知れないですし!」
そうして、二人は校庭に向かった。
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