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オルグの教室では、はやくも、噂が広がっていた。
おい、知ってるか?オルグ、リム先輩と別れたらしいぜ。おう知ってるともさ。オレ告白しよっかなー。あ、ずるいぞお前。オレが先―。
ぼそぼそと男子が話している。意外に人気があるらしい。まぁ、だからといって相手にはしないが。
「ふぅ…。」
ため息をついた。
なんだろう、疲れた。もう帰りたい気分だ。
さて、噂を聞き付けて、ウキウキの人がもう一人。
担任のライドである。
何故ウキウキかは…まぁご想像におまかせしよう。
とにかくウキウキなのだ。
スキップなんかしながら教室に入ってきた。
「おはよう、オルグ。」
「…なんですか?やけにウキウキしてますけど。」
くるっと回って思わせぶりに言う。
「んふふ~、なんでもないよ~♪」
変な先生だ。教えてくれたっていいのに。
まあいいや、忘れよう。
当然のように居眠りしようとした、その時。
「オールグー!!」
いきなり、まだ授業も始まっていないのに、サードが飛び込んできた。
クラスメイトがざわつく。
「ねぇねぇねぇ、リムと別れたんだって?!」
こいつ、なんてことをこんなはっきりと。
ざわめきが激しくなる。
「…べつに。別れたも何も、もともと付き合ってないんだけど。」
確かに。
「じゃあ、じゃあじゃあじゃあ…。」
クラスの目も気にしないで、思いっきり切り出した。
「オレと、付き合ってください!!」
「無理。死ね。消えろ。」
これこそがプロポーズの断り方の最終形態。
そんな感じだった。
そうだよなあ、という空気とともに、自分も…?!という空気が流れた。
「えぇーッ?!なんでっ?!」
「嫌いだから。」
先輩に対してなんていい方。しかも半泣き相手に繰り出された冷徹な言葉。
もう泣きっ面に蜂なんて砂糖よりも甘く感じてしまう。
「じゃあ、やっぱりリムが…?!」
「好きな人なんていない。」
「んもぅ、オルグは子供だなぁ。じゃあ、オレが恋愛を教えてあげ―」
「いらない。真面目にお前は嫌い。」
最終的にそう言い捨てて、颯爽とドアへ向かう。そして、くるりと振り返って、
「先生、気分悪くなったので保健室行きます。」
といって、教室を出ていってしまった。
後には、ボロボロに傷つけられたサードと、唖然としたクラスメイトとライドが残った。
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