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校庭には、たくさんの人があふれていた。
さすが、軍隊の学校というべきか、だいたいみんなゴツい。
ここで恋愛って…諦めたほうがいいな。
リムは入学二年目にして、改めて自分に言い聞かせた。
それにしても、何故この学園を希望したのか、自分に聞きたいものである。
「…何か、皆さん強そうで、誰が優等新入生か分かりませんね…。」
ダニエルは一生懸命に例の新入生を探しているが、あいにく、オレには興味が無い。
かわいい娘かわいい娘~🎵
やっぱりわずかな希望でも探さないと。
青春は来るものじゃない、捕まえるものだっ!
なぁんて、意味の無い教訓を掲げて、人ごみに目をこらす。
見えては消える人の中。
何か、
綺麗なものが一瞬だけ見えた。
あれは…。
心が揺れた。
周りの音が消えた。
金色の髪がはかなげに風に遊ばれて、紺碧の瞳は澄んでいた。
小学生のように、小さく華奢で、触れば、おれてしまいそう。
トクン。
手を伸ばしても大丈夫だろうか。
「…ねぇ。」
そう言って、声をかけてみた。
触れることのできた肩は、やはり少し骨張っていた。
「…なんですか?」
落ち着いた声が耳に響く。
真っ直ぐな目が、自分に向かっている。
「あの…えと…。」
声をかけたのはいいが、どうしよう。
話題を考えてなかった。
少しの沈黙を壊したのは、ダニエルだった。
「リムさん!いましたか?」
そうだ、それだ。
「あのさ、今年入って来る奴で、なんか強くて最年少の奴がいるらしいんだけど、知らない?」
「…知ってます。」
彼女は静かに答えた。
「マジで?!今どこに…。」
突然。
胸倉をすごい力で掴まれた。
彼女の顔が前髪があたるほど近くにある。
まさか。
「それは、」
目が怖い。あまりの殺気に、冷や汗が出る。
「僕のことだよ、先輩。」
周りが騒がしい。
彼女は舌打ちをして、オレを下ろした。
「今はこれくらいにしておくけど、覚えとけ。」
全身から武器の殺気を漂わせて。
「人は見た目で判断しちゃいけないよ。」
そう言い捨てて、颯爽と行ってしまった。
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