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さて、入学式も無事終わって、リムは帰ろうとしていた。
あの娘の顔が忘れられない。
かわいいのももちろんだが、何より、あんなに怖い殺気は初めてだ。
今どうしてるだろう。
また、誰かと喧嘩しているのだろうか。
そう考えると、途端に心配になった。
「…どうせ暇だし。」
誰への言い訳かわからない言い訳をして、学園の敷地内をうろつくことにした。
体育館裏。
そこは、悪い人が弱い人をイジメたり、誰かが愛の告白をしたりするところ。
そして、現在。
悪い人が弱そうな人に愛の告白をしていた。
「お前、かわいいじゃねぇか。オレと付き合えよ。」
あまりにもいかにもな台詞を汚く口からはく。
ちなみに、弱そうな人とは、最年少の最強戦士である。
そうとは知らず、男は汚く言葉を吐きつづける。
「あ。めっけ。」
リムはちょうど二人を見つけた。
だが、あえて声を出さなかった。
みただけでわかるくらいに彼女が怒っていたからだ。
恐すぎる。
何故あいつは気が付かないんだ?
あのままだと―!
心配しなくても、ことはすぐに起こった。
「…さい。」
「あ゛ぁ?」
脅すようなその尋ね方が駄目だった。
「あっ、お前危なっ…!」
「あ゛ぁ?!なんだてめぇ―」
「うるさいって言ってんだよ!!」
彼女の怒りが爆発したのだ。
「なっ―!?」
リムに気を取られていたのもあって、男の反応は遅かった。
彼が振り返ったころには、彼女は彼の上にいた。
「かはっ!?」
綺麗に後頭部へ蹴りが入り、男は地面にひれ伏すように倒れた。
「…すっげ。」
かなり強い。
あの時喧嘩になっていたらなんて、恐ろし過ぎて、考えたくない。
「お前、しつこいな。」
いつのまにか、彼女は目の前にいた。
「お前も蹴られたいの?」
ぶんぶんと首を激しく横にふった。
「じゃなくて、ほら、名前!いつまでもお前とかじゃ変じゃん?!」
必死に言ってみる。
すると、彼女は少し不満げにいった。
「僕は別に…。」
「オレはリム!二年!お前は?」
文句はあえて無視。
リムの勢いに負かされて、彼女も渋々口をひらく。
「僕は…オルグ。」
「よろしくなオルグ!」
「気安く呼ばないで。」
ピシャリと拒否られてしまった。
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