1.初診

2/7
前へ
/137ページ
次へ
私が就職したのは、街中の小さな診療所。 まだ開院して3年目という比較的新しいクリニックだった。 スタッフは、常勤の医師2名と心理士2名、受付2名と、私の計7人。 こぢんまりとしてアットホームな、良いクリニックだ。 このクリニックでPSW(精神科ソーシャルワーカー)を採用したのは初めてだということで、初めのうちは仕事がほとんどなかった。 医師達も、この職種をどう使おうかと考えあぐねているようだった。 私は、元々あった空き部屋を面接室として与えてもらっていたのだが、そこに籠もっていても何も始まらない。 私は考えた末、受付を手伝いながらクリニックの『流れ』を学ぶことにした。 受付には、私だけでなく心理士さんもよく出入りしている。 やはり、患者さんがクリニックに入って来てからの、最初の表情が見られるというのが重要な事らしい。 『今日はこの患者さんは調子が良さそうだな』とか、 『少し落ち込んでいるようだな』というのがわかれば、その日の面接の進め方も違ってくるというわけだ。 あと待合室での様子も見逃せない。 面接では見せない、素の表情が垣間見れることがあるからだ。 私はそれをきいて、院内での患者さんの様子にできるだけ気を配ってみることにした。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

356人が本棚に入れています
本棚に追加