ハイデの書 ～ある召喚士の物語～

序章

日が陰り、影が長くなってきた。
里の中央の広場で集まり、戯れていた子供達も、それぞれ向かえに来た親達に促され、次々とその場を去っていく。

一人二人と姿を消していく中、彼だけはその場を離れなかった。

橙色の光を受けながら、顔を上げようともせず、黙々と地面に何かを書いている。
たった一人、その歳に似つかわしくないほど真剣な表情で、一心にそれを書いている。

やがてそれが困難になるほど辺りが暗くなると、彼はようやく顔を上げ、立ち上がる。

名残惜しそうに足元を見た後、足取り重くその場を離れていった。