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「好きな人・・か。」
お互い同じ気持ちでいるつもりだった。
好きと言う度合いなんて
人それぞれで
言葉は少なくとも伝わってると思っていた自分が情けない。
その後の授業など、まったく頭に入る訳が無くノロノロと帰る支度をする。
「おい、浩司(コウジ)!浩司!」
自分の名前を呼ばれていると気付いて振り返った時にはムッとした表情の津田孝(ツダ タカシ)が立っていた。
「・・あ、ゴメン。何?」
「お前さぁ、何回呼んでも気付かないから俺は無視されてるのかと思ったよ。
・・まぁ、いいや!カラオケ行かね?今から皆で行くんだけど」
あんなにムッとしてたのにまぁ、いいや!なのか。コロコロ変わる彼の表情は
見ていて飽きなかった。
人は笑うと元気になると聞いた事がある。例えそれが小さな要素でも。
「あー。いや、いい。今日は直帰するよ。そんな気分じゃねぇし。」
「そう?・・何があったか知らないけど、元気だせよ。じゃぁな!」
孝は、そう言うと背中をポンと叩き教室を後にした。
理由は聞かれたくないし
話したくない。
じゃあ悟られなければいいものを
俺は感情が顔に出ているのを隠しきれなかったのだろう。
それを感じて自分を気遣ってくれる孝と友達になれた事を嬉しく思った。
眉間に感じた圧は解かれ
軽くなった。
今日は真っ直ぐ帰ろう。
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