人肌

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誰か愛してよ。 誰か私を見てよ。 『俺には、重いよ。』 なに? 私は、怒ることも、泣くことも許されないの? 神様。 神様だけは、私を愛して。 彼氏と喧嘩した。 理由は些細なこと。 仕事が遅くなったとか、携帯忘れて連絡取れなかったとか。 私が我慢すればよかったこと、私が大人げなかったこと。 あー、馬鹿馬鹿しい。 怒ったって良いじゃない! 泣いたって良いじゃない! なによ!重いって! 勢いで出てきた彼氏の家。 なにも持たない、携帯も財布も、明日の会議の企画書も彼氏の家。 企画書だけでも持ってくれば良かった。 「あっ、雨。」 ぽつり、ぽつりと空から降ってきた。 最初は優しく降ってた雨も、日頃の行いが悪いせいか、強くなってきた。 「っち。」 傘も無いし、財布を忘れた私には、傘を買うお金さえない。 もういい…、このまま帰ろう。 さっきの喧嘩を思い出た。 グルグルとした黒い気持ちが胸を支配する。 「なんで、私が泣いてるのよ。」 私が悪いの? どうせ、私が悪いのよ! もう、嫌! 恋なんて面倒くさい。 一人の人にこんなにも、悩むなんて…。 雨と涙に濡れて歩く。
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