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聞かれたことへの気恥しさ、そして少しの気まずさと葛藤していたカイに、ギルティアスは続けた。
「大切にするといい。その言葉が、迷った時の道標となるように」
何かを悟ったような言葉。
それはこれからのカイの往く道を示唆しているようにも思えた。
「そうだった。カイ、レイ殿下が迎えに来られてるんだけど……」
ルーラが思い出したように言ったのをきっかけに立ち上がる。
「もう来たのか……。じゃあ、そろそろ行くか」
アルトとギルティアス、その他の面々を促し、カイは家に戻るべく歩き出した。
* * *
家の前に立ったカイは、目の前の光景に大きく目を見開いた。
「…………!?」
そこには村人のほぼ全員が揃っていた。
呆然と立ち尽くすカイの後ろから、楽しそうな声がネタばらしをする。
「驚いたか?」
「みんな、カイの見送りをしたいって。自然と集まったのよ」
ルーラとジンがしてやったりという顔をしている。
二人は、いや、三人は知っていたのだ。その上でカイを捜していたということになる。
完全にハメられた。
カイはまさか村人達が、こうして見送りに来るとは全く思っていなかった。ルーラとリフは当たり前にいるだろうと思っていたし、ジンも多分来るだろうと予想はしていた。
しかし、それだけだと思っていた。
「こりゃとんだサプライズだな」
「良かったですね、カイ」
意外そうに村人を見回すドルガと、カイに微笑みかけるヴィーゼンに答える事さえできない。それほどこの予想外な事態に驚いていた。
でも同時にカイの中で高揚感が生まれた。素直に嬉しいと思った。
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