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平民である彼女らは、王子と気安く話せる身分ではない。
かと言って、王子からの質問を無視することは無礼に値する。
悩んで答えあぐねていると、案の定機嫌を損ねてしまったようだ。
ただし、レイではなくトールの。
「……貴様ら……、レイ様を無視するとは無礼な。
さっさと問いに答えろ」
「……トール。
それでは彼女達も答えにくくなるだろう」
レイは苛々の募る彼を静かに制すると、堅い表情を少し和らげた。
「そんなに硬くならなくてもいい。
先ずは名前を聞かせてくれるか?
その方が少しは親しみやすいだろう」
和らいだ周りの空気にほ、と息を吐いたルーラは、今度はしっかりと答えた。
「ルーラです。こっちはリフ。
私達、カイとは小さい頃からの幼なじみなんです」
まだ若干肩に力が入っているのは目に取れたが、漸く答えてくれたルーラにレイは満足そうに頷いた。
「ルーラと……リフか。よろしく。
俺はレイ。もうバレているだろうが、この国の第二王子だ。
こっちは従者のトール」
「第二……王子? 第一王子ではないんですか?」
"第二"という所に疑問を覚えたルーラは思わず聞き返し、それにレイは、さも当たり前のように驚くべきことを口にした。
「第一王子は━━……君達の幼なじみだ」
「……カイ、が……?」
ルーラは一瞬、彼が何を言っているのか分からなかった。
そして、自分の耳を疑った。
(カイが……この国の王子!?)
そんなこと、カイは一言も言っていなかった。
そんな素振りも今まで見せたことはなかった。
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