欲した言葉

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  カイはレイの問いかけに、すぐ答えることができなかった。   頭の中では帰りたくないと思っているのに、頭の隅の方に隠れていた帰りたいという気持ちが見え隠れする。   すぐ答えられない自分に腹が立ち、ぐっと下唇を噛んだ。     「本当は……、帰りたいんじゃないのか?」     何もかも見透かしたようなレイの声。   それはカイの胸の奥に響き、カイ自身に問いかけた。     「━━……帰り、てぇよ……」     蚊の鳴くような小さな声は、彼の言葉を聞き漏らさんとするレイの耳にしっかりと届いた。     「だったら……「でも!!」     レイの言葉を、カイの強い声が遮った。   そしてレイは、それ以上何も言えなくなってしまった。   勢いよく上げたカイの目には、本当にうっすらだが涙が浮かんでいたからだ。     「……でも俺はっ……、国王本人に追放されたんだぞ!! ……今更……戻れる訳ねぇだろ」     突然城の外に連れ出された幼い自分。   父親である国王は、何故かその時だけ笑っていた。   だから少し安心したんだ。   やっとその笑顔が自分に向いてくれたと━━……。   でもそれは、まやかしの笑顔だった。   『ちょっとここで待ってなさい』    その言葉を素直に聞き入れたカイの元に、父王が戻ってくることはなかった。  "あぁ、捨てられたんだ"、と思ったのは大分後のことで。   真冬の寒さに、だんだんと気が遠くなっていった。  
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