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隣に立ち、薄緑の長い髪を風になびかせる少女は、ふとそんなことを思いながら苦笑を浮かべた。
「せっかくの誕生日なんだから、もうちょっと嬉しそうな顔しなさいよね。もう……」
今日誕生日を迎える当の本人は、全く興味がなさそう。
むしろ、嫌そうな顔をしている。
彼は毎年この日になると、普段の無愛想な顔をより一層不機嫌にするのだ。
理由は分からない。
「……誕生日がなんだ。俺はどうでもいい。
━━……むしろこの世から誕生日なんて日がなくなりゃいいのに」
「まぁたそんなことを…。
なくなる訳ないでしょ。
誕生日はその人が産まれた日を祝うんだから……」
少女はカイの言葉に、やれやれと眉を下げた。
「なら尚更いらねぇな。産まれた日を祝って何が楽しいんだか━━……」
「え~、楽しいじゃん。
プレゼント貰えるし~、好きなものいっぱい食べられるし~━━……」
「……もうちょい他に何かないのかよ……」
楽しそうに指折りしながら話す少年を見て、思わず溜め息が漏れた。
「何かって?」
「……もういい」
答えるのが面倒になって、カイは半ば強制的に話を中断させた。 続けるだけ無駄だろう。
どうせ食べ物の話を重点的にし始めるに違いない。
~†魑鴉人形†様より~
【ルーラ】
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