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頭元に置いておいた弓矢を手に取り、矢の入った筒と一緒に肩へ掛けながら立ち上がろうとした時、少年が再び口を開いた。
「そういえば今日って、街で何かあったの?」
少年の疑問にカイは思わず、ピタリ、と動きを止めた。
その横でやれやれと呆れた表情の少女が答える。
「バカねぇ……。リフ、アンタそんなことも忘れたの? ━━今日はレイ王子の誕生祭よ」
「あ!そっかぁ~。
アハハ~、忘れてた~」
少年、リフは気の抜けた笑顔で頭を掻いた。
毎年恒例になっているこのやり取りも、さすがにウンザリしてきた。
「誕生日っていえばさ、カイってレイ王子と誕生日同じだよね~」
「そうそう。
それに直接は見たことないから分かんないけど、誕生祭に行った子がカイに似てるって言ってたよ」
カイの肩がピクリ、と揺れた。
伏せた彼の目は、長めの前髪に隠れて見えない。
━━……似てる
今までずっと、知らない振りをしていたのに。
「……当たり前だろ。だって俺と彼奴は━━……」
呟いたカイの声は、すぐそこにいる二人の耳に届くことなく、風に流されて消えた。
~奈早希様より~
【ルーラ&リフ】
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